第6回 散布図による分析
このコラムでは、業務効率化やワークスタイルの充実、福利厚生の充実、人員配置などに日々頭を悩ませている人事の方を対象に、人事データを活用するための分析テクニックをシリーズでご紹介しています。
第1回~第5回のコラムではそれぞれ「残業時間」「採用活動」「勤続年数と退職者」「人事評価」「資格取得」と、それぞれの分野に関連する分析をご紹介してきましたが、今回のコラムは、少し趣向を変えて、グラフの種類に着目してみました。
それぞれのグラフの「特徴」や、「いつ、どういう場合に使うと効果的なのか?」
これがわかっていると、自分で報告資料を作る時も、あるいは部下に資料作成を依頼したり、修正のアドバイスをしたりするときにも役に立ちますよ。
それでは、第6回目の今回は、
「知っているのと、知らないのでは大違い!? ~散布図の効果的な使い方編~」です。
「散布図」とは、データの2つの項目の値をそれぞれX軸、Y軸にとり、データの位置を点であらわしたグラフで、点のまとまり・バラつきから2つの項目の間にある関係性を視覚的にとらえやすいという特徴があります。
そのため、効果的なシチュエーションとしては、2つの数値データから「相関関係の有無の判断」、「外れ値の発見」、「全体の傾向や特徴の把握」をしたい場合などが考えられます。
上述の通り、散布図は2つのデータ項目の間にある関係性を分析することを得意としています。
点が右肩上がりに分布している場合は、「正の相関」がある、逆に点が右肩下がりに分布している場合は、「負の相関」がある、と言います。
散布図を使うと、このような点の配置の傾向から、あるデータ項目が、他のデータ項目に対してどの程度影響を与えているかを分析する、あるいは仮説を立てるのに役立ちます。
今回は、「有給消化率」「勤怠状況」「資格試験受講回数」のうち、どの要素が人事評価のランクに強い影響を与えているかを分析してみましょう。
【使用したデータ】
※ 人事評価の対象となる期間で集計を行う
社員ごとに、【1】有給消化率、【2】遅刻/欠勤/早退回数、【3】資格試験受講回数の3つのデータを人事評価の対象となる期間で集計し、それぞれと5段階のランクの値の組み合わせで、3つの散布図を作成しました。
まず、有給消化率と人事評価ランクの組み合わせでは、散布図上にプロットされた点が、グラフ全体に散らばっており、特に関連性は見られません。
つまり、有給消化率は人事評価結果には、ほとんど影響を与えていないということがわかります。
逆に、点の配置に相関関係がみられる場合はどうでしょうか。
たとえば、点の配置が右下がりになっている部署があるとすると、評価者が有給休暇を取得している人ほど低い評価をつけているという可能性があるため、注意が必要です。
※たまたま集計した期間でそのような傾向がみられるだけということもあるので、同じ部署の他の集計期間でも同じ傾向がみられるのかを確認した方がよいでしょう。
次に、勤怠状況と人事評価ランクの組み合わせでは、散布図上にプロットされた点が、左上から右下に向かって直線的に並んでいます(負の相関関係がある)。
つまり、遅刻/欠勤/早退回数は、人事評価結果に強い影響を与えており、遅刻/欠勤/早退回数の多い社員ほど人事評価ランクが低いということがわかります。
したがって、遅刻/欠勤/早退回数の多い社員は、人事考課の際に生産性の低い社員と見なされる傾向にあり、ローパフォーマーの改善には、遅刻/欠勤/早退回数を減らすような指導、支援が有効と考えられます。
最後に、資格試験受験回数と人事評価ランクの組み合わせでは、散布図上にプロットされた点が、左下から右上に向かって直線的に並んでいます。
遅刻/欠勤/早退回数のグラフよりは、点がばらけているものの、資格試験受験回数についても、資格試験受験回数の多い社員ほど人事評価ランクが高い、つまり、人事評価結果にある程度影響を与えているということが言えそうです。
ここから推察できることとしては、資格試験受験回数の多い社員は、人事考課の際にモチベーションの高い社員と見なされている可能性がある、ということです。
こうした場合には、社員のモチベーション向上や自己育成推進の施策として、資格取得奨励制度の導入や強化が有効と考えられます。
つづいて、散布図を使う効果的なシチュエーションの2つ目「外れ値の発見」について、全体と各部門の離職状況という観点からみてみましょう。
この例では、全社および6つの本部について退職率と平均勤続年数を計算し、横軸に退職率、縦軸に平均勤続年数をとり、全社および6つの本部のデータをプロットしています。
【使用したデータ】
全社として、あるいは人事部門の事業目標として、離職状況を改善することを掲げている場合、全社的にまんべんなく必要な施策もあれば、ある部門に特に重点的に対処するべき施策もあるでしょう。
この「特に重点的に対処すべき」箇所を発見するために、散布図上の外れ値に着目してみましょう。
このグラフでは、「営業本部」が他の部門に比べて全社平均から右下に大きく離れた位置にあります。
つまり、全社の中でも突出して「退職率が高く、勤続年数が短い部署=離職状況が特に悪い部門」ということになります。
そうした場合、全社、あるいは営業本部の従業員に対して、満足度/モチベーション調査や配属希望調査をすることで、離職の原因となっている要素を見つける、ということも離職防止の施策を立てる上で必要となってくるかもしれません。
あるいは、先に述べた影響分析をここでも活用するというのも1つの手です。
たとえば、縦軸に勤続年数、横軸に「残業時間」「ここ数年の業績評価の平均値」「売上成績」「給与水準」などを取ってみると、勤続年数に影響の大きい要素を発見出来る可能性があります。
最後に、散布図が得意な分析の3つ目、「特徴の分析」についてご紹介します。
下のグラフでは、社員のTOEIC受験データから、全社と各部門の英語力向上キャンペーンへの取り組み状況を散布図で表現しています。
全社及び部門別に受験率と受験者の平均スコアを集計し、散布図を作成します。
この例では、全社および6つの本部について、受験率と受験者の平均スコアを集計し、散布図で表示しています。
【使用したデータ】
ここでは、各部門の特徴を捉えるために、全社を平均として上記のグラフでは4つの象限に分けてみました。
生産本部、調達本部については全社の平均に近いですが、物流本部、営業本部、管理本部についてはそれぞれ特徴がありそうです。
英語力向上キャンペーンという点でいうと、「開発本部」のように、受験率、スコア共に高い状態、つまり右上に点がある状態が理想ですね。
それぞれの部門の点が右上に来るようにするにはどうすればよいでしょうか?
これについては単純に分けると、次の2つが考えられます。
また、施策と各部門の特徴を合わせて考えると、次のように考えられます。
物流本部:受験率とスコアを高める施策の両方が必要 管理本部:受験率を高める施策が必要 営業本部:スコアを高める施策が必要
今回は散布図の特徴と使用するのに効果的なシチュエーションについてご紹介しました。
散布図は「2つのデータの関係性を視覚的に把握しやすい」という特徴があります。
また、シチュエーションとしては
などに使うと効果的な分析ができるでしょう。
使用するデータ自体も単純なので、是非今後の分析にご活用ください。
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