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第3回 勤続年数と退職者の分析

このコラムでは、業務効率化やワークスタイルの充実、福利厚生の充実、人員配置などに日々頭を悩ませている人事の方を対象に、人事データを活用するための分析テクニックをシリーズでご紹介しています。

 

第3回の今回は勤続年数と退職者の分析がテーマです。


勤続年数と退職者の分析とは

前回のコラムでは、採用活動の分析を行いましたが、いくら採用活動を活発に行っても、退職者がたくさん出てしまっては、採用活動の意味がなくなってしまいます。
そこで今回は離職防止対策の一環として、勤続年数や退職者のデータ活用についてご紹介いたします。

 

今回取り上げたテクニックは次の3つです。

 

  1. 退職率×勤続年数散布図(※1)
  2. 退職者勤続年数内訳グラフ
  3. 勤続年数複合グラフ

 

このコラムを読んでいただき、退職者の数や勤続年数の相関関係から、定着率の悪い部署や勤続年数の構成のバランスに偏りのある部署の早期発見にお役立ていただけましたら幸いです。

 

用語解説

 

(※1) 散布図
データの2つの項目の値(例えば、退職率と平均勤続年数)をそれぞれX軸、Y軸にとり、データの位置を点であらわしたグラフです。2つの項目の値の間にある相関関係を視覚的にとらえやすいという特徴があります。

退職率×勤続年数散布図

全社及び部門ごとの退職率と平均勤続年数を計算し、散布図で表示します。散布図にすることで、各部門における離職状況を視覚的に分析し、問題のある部門を見つけることができます。

 

 

この例では、全社および6つの本部について退職率と平均勤続年数を計算し、横軸に退職率、縦軸に平均勤続年数をとり、全社および6つの本部のデータをプロットしています。

一般的な傾向として、退職率が高いほど平均勤続年数は短くなるという「負の相関関係」がありますから、プロットされた点は、左上から右下に向かって並ぶことになります。

 

このグラフからわかる問題がある部門は「営業本部」です。「営業本部」は他の5本部に比べて全社平均から右下に大きく離れた位置にあります。

つまり、全社の中でも突出して退職率が高く、勤続年数が短いということです。このような傾向にある部門は、担当の入れ替わりが激しく、スキルや経験の蓄積も浅くなりますので、離職防止への対策をより強化する必要があります。

退職者勤続年数内訳グラフ

先ほどの退職率×勤続年数散布図からわかる問題がある部門がもう一つあります。
それは「開発本部」です。「開発本部」は、「管理部門」と比較すると、勤続年数はほぼ同じですが、退職率はかなり高くなっています。

 

 

また、「調達部門」と比較すると、退職率はほぼ同じですが、勤続年数はかなり長くなっています。
つまり、「開発本部」は退職率が高いほど平均勤続年数は短くなるという「負の相関関係」に従っていないことになります。
このような他のデータとは異なる傾向を示しているデータは、外れ値(はずれち)と呼ばれ、何か問題が起きていることをあらわしています。
退職率が高いにもかかわらず、勤続年数が短くならない原因としては、退職者が勤続年数の短い社員に偏っていることが考えられます。
この仮説を確認するには、退職者勤続年数内訳グラフが有効です。
過去の一定期間内(例えば、一年以内)に退職した社員の退職時の勤続年数を部門ごとに集計し、100%積み上げ棒グラフで表示します。

 

 

そうすると、「開発本部」の退職者が勤続5年未満の社員に集中していることがわかります。 このことから、「開発本部」では他の部門に比べて、新入社員の受け入れがうまくいっていないことを示しています

勤続年数複合グラフ

退職率×勤続年数散布図から問題のある部門を2つ見つけることができましたが、このグラフから全ての問題を発見できるわけではありません。特に勤続年数については平均値を使用しているため、組織を構成する社員の勤続年数のバランスがどうなっているかを見て取ることはできません。社員の勤続年数のバランスを確認するには、勤続年数複合グラフが有効です。勤続年数を区間 (例えば5年ごと)に分け、部門ごとに各区間に含まれる社員数を集計し、100%積み上げ棒グラフで表示します。さらに、平均勤続年数の長い順に部門を並べ替えた後、平均勤続年数の折れ線グラフを追加して複合グラフを完成させます。

 

 

一般的に平均勤続年数が短い部門ほど、勤続年数の短い区間の構成比が大きくなる傾向があります。
この例でも、平均勤続年数がもっとも短い「営業本部」は、勤続年数5年未満の構成比がもっとも大きくなっています。

 

しかし、平均勤続年数がもっとも長い「管理本部」では、本来小さくなるはずの勤続年数5年未満の構成比がかなり高くなっています。その原因は、15年以上20年未満を中心とした中堅層の割合が極めて低いためで、「管理本部」を構成する社員の勤続年数のバランスが偏っていることがわかります

 

このような現象は、過去の一定期間、新規採用活動が極端に低調であった場合にみられますが、バランスを回復させるために、若手とベテランの間を埋める中堅社員の採用を意図的に行うなどの対応が求められます。

 

さて、今回は勤続年数と退職者に関する分析ということで、散布図・内訳グラフ・複合グラフの3種類をご紹介いたしました。
社内制度の整備や福利厚生、ワークライフバランスの充実など、社員の定着率が上がるよう、頭を悩ませ、そんな中、時間やお金、労力をかけて採用した人材がすぐに離職してしまったというご経験をされた方もいらっしゃるかと思います。
新卒採用にしても中途採用にしても、自社にあった人材の受け入れや、社員の定着が図れるよう、採用活動と併せて今回ご紹介したような分析方法を役立てていただければ幸いです。

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