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第5回 クリック分析

この連載コラムでは、ECを運営する企業が、ECシステムに蓄積されたデータを活用するための分析テクニックを全7回にわたって解説します。

第5回の今回は、顧客が購買に至るまでの活動の記録をもとに、製品や顧客グループの傾向や特性を分析するクリック分析について解説します。

クリック分析のデータモデル

クリック分析は、商品の販売数や金額だけでなく、EC特有のデータも組み合わせた分析で、「商品紹介ページのクリック」や「買い物カゴへの商品の出し入れ」といったデータなども利用していきます。これによって、顧客の購買動向の分析と商品販売における課題の発見が出来るようになります。
※ただし、クリック分析で使用するログデータは、第1回「ECデータの種類とその構成」で説明したように、データ量が多くなる傾向があります。そのため、自社の状況に合わせて、特定の商品やバナーなどのデータに限定して分析するといった工夫も必要です。

下の図は、クリック分析のデータモデルの例になります。今回はこのデータモデルを使用して、「コンテンツクリックによる人気度分析」「コンバージョン率分析」の2つについて解説してきます。

クリック分析のデータモデル


1、コンテンツクリックによる人気度分析

顧客の購買行動として、購買実績とは別に「どういった商品に興味を持っていたか?」について、商品紹介ページのクリックデータを使って探っていきます。

前回のコラム「第4回 売上分析」のところでは、商品カテゴリ別の売上商品価格帯をランキング形式で調べました。


同じように商品カテゴリ別にクリックデータのランキングを調べた結果が次の図になります。


売上商品価格帯ランキングと比較すると、ビールは1位から3位まですべて実際に売れている価格帯とクリックの多い価格帯が同じ結果になっています。
一方、それ以外のワインや焼酎、日本酒については、売上実績とは異なった順位になっています。クリック商品価格帯ランキングで上位にランキングされている価格帯は、売上実績の方のランキングで見た時よりもクリック結果のほうが高い価格帯の商品であるという結果になりました。ワインについては、価格帯のランキングが2つの表ではまったく逆になっているのが分かります。



売上で1位だった1円~1000円の価格帯は、クリック数では3位、売上で3位だった2000円~3000円の価格帯がクリック数では1位になっています。 日本酒においては、売上の価格帯では出てこなかった3000円~4000円という価格帯がクリック数では3位に入っています。焼酎も1位と2位が売上とクリック数では入れ替わっており、クリックの1位は3000円~4000円です。

いずれも、共通して言えることは、売上とクリック数のランキングを比較した場合、クリックの数のほうが高い価格帯が上位に入っているということです。

このことから、顧客は同じ商品カテゴリ内のいろいろな価格帯の商品を検討してから購入に至るという経緯が見て取れます。さらにクリック結果の価格帯のほうが売上実績より高額であるという傾向から、実際に購入する商品より高額の商品にも実は興味を持っているということが分かります。

リカーショップでは、顧客1人あたりの購入単価を高めたいと考えていましたが、それが顧客の興味範囲と一致していたことが分かり、実際の施策検討を始めることにしました。

2、サイトへの訪問と売上を見る「コンバージョン率分析」

まずは「コンバージョン率」の意味を明確にしておきましょう。
ここで言うコンバージョン率とは、「サイト訪問者数に対して実際に売上に結び付いた人の割合」を表わします。サイトに来てくれる顧客が多くても、何もアクションせずに去って行くのではECサイトの経営は成り立ちません。そのためECサイトの運営にあたっては、コンバージョン率を常に意識しておく必要があります。

コンバージョン率分析の事例として、顧客の動的プロファイルの1つである「累計購入回数」という属性を使って顧客をセグメント化して分析してみましょう。

まず累計購入回数を使って、顧客を2つのセグメントに分けます。1つはリカーショップサイトの利用にまだ慣れていないビギナーのセグメント、もう1つはすでに何回も購入している熟練者のセグメントです。
ビギナーと熟練者の定義は、累計購入回数が4回以下をビギナー、5回以上を熟練者とします。では実際に、それぞれのコンバージョン率を比較してみます。

下のグラフはビギナーと熟練者のコンバージョン率を年代別に比較したものです。ビギナーの場合、年代が上がるに従ってコンバージョン率が落ちていることが分かります。一方、熟練者の場合は、年代による傾向は読み取れません。この結果から大きく言えることは、ビギナーのコンバージョン率が熟練者に比べてかなり低いということです。

コンバージョン率分析1


ビギナーとはいえ会員登録をしてサイトにも訪問していることから、購入したい意思はあるのでしょう。
ただ、数ある商品の中からどの商品に決めようか迷っている様子が伺えます。熟練者のほうはサイトのコンテンツがどのように構成されていて、どこを見れば自分の購入意思を決定するための情報が得られるのかをある程度分かっているため、それほど迷うことなく商品を購入するまでの流れができていることが想像できます。

ではここで、ビギナーが商品購入を迷っている様子を裏付けるデータを見てみましょう。次の図はビギナー、熟練者それぞれの累計買い物カゴ出し入れ回数を月別に表わしたものです。買い物カゴへの出し入れ回数を見てみると、ビギナーの回数が熟練者に比べて圧倒的に多いことが分かります。


コンバージョン率分析2


このような状況を把握したリカーショップでは、ビギナー向けに何か対策を打ちたいと考えました。ただしここでは、ビギナーに対してのみ何か特別な宣伝をするというような対応よりも、むしろ熟練者も含めた会員全員に対して商品に関するより深い情報を提供することが有効なのではないかと考え、サイトを一部改良することにしました。

 

~Webサイトの改善:リカーショップの例~

現状は、商品紹介のページと同じ場所に、その商品を購入した顧客による商品評価(感想や点数)を見ることができるページ構成になっています。このままでも購入実績のある顧客からの意見として、ビギナーにとっても熟練者にとっても有効な情報ではありますが、これまで以上にコンバージョン率を上げたいと考えたリカーショップでは、買い物カゴに商品を入れた後でも商品評価が見られるようサイト構成を工夫することにしました。

1つは点数別の割合、もう1つは直近3カ月間の売上数量です。これによって、どれだけこの商品が購入されているのかという「売上数量」とその評価を表わす「点数」とが一目で分かるような、シンプルなレビュー機能を付けることにしました。

今回は、顧客が購買に至るまでの活動の記録をもとに、製品や顧客グループの傾向や特性を分析するクリック分析について解説しました。次回は、商品購入後の商品評価データを分析し、潜在的な顧客ニーズを発見するナレッジ分析について解説します。

 

本Webサイトではこの他にも様々なデータ活用のテクニックをご紹介しています。ぜひご覧ください!


 

 

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