GoodData HOME > コラム > ECデータを活用するための分析テクニック > 第3回「顧客分析」

第3回 顧客分析

この連載コラムでは、ECを運営する企業が、ECシステムに蓄積されたデータを活用するための分析テクニックを全7回にわたって解説します。

第3回の今回は、顧客プロファイルを利用してセグメンテーションを行う顧客分析について解説します。

顧客分析のデータモデル

顧客分析とは、その名のとおり顧客の基本的な属性を分析する手法で、その基本的な属性を分析するだけでも、ある程度のビジネス的な課題を読み取り、対応策を考えることができます。しかし、顧客分析の目的はこれだけではなく、より詳細で高度な分析を行なうために顧客セグメンテーションを実施する、すなわち顧客をグループ化するという重要な目的もあります。

ここからは、個々の分析手法についてデータモデルを使用して見ていきます。一目でデータモデルを理解していただくために、分析対象となるデータを概念的にまとめたものを準備しました。
次の図は、中央に分析したい数値データ、周囲にその数値データを分析するのに使う軸となるデータが配置されています。それぞれを結ぶ線は、リレーションが存在していることを表わしています。

顧客分析のデータモデル


これは顧客分析の説明に使用するデータモデルになりますが、この図から中央にある顧客数を、年代別や趣味別、あるいは組み合わせて分析するといったように、どのように分析するかというパターンの可能性を簡単に読み取ることができます。

顧客分析で使用する分析軸のデータ、つまり顧客プロファイルデータは、静的プロファイルと動的プロファイルに分かれます。静的プロファイルと動的プロファイルの違いは次のとおりです。


  1. 静的プロファイル
    生年月日/性別/地域といった、不変的もしくはほとんど変化しない顧客属性の情報からなるデータ。どういう属性の顧客がどういう商品を購入したかを把握できる。
  2. 動的プロファイル
    購買ランク/訪問頻度/登録期間といった、変化する顧客属性の情報からなるデータ。最新の顧客の購買行動を把握できる。

まずは静的プロファイルによる分析が基本となり、動的プロファイルはその分析結果をより深めるものと言えます。したがって、顧客分析では最初に静的プロファイルによる分析を行ない、その結果を踏まえて、動的プロファイルによる分析を行なうのが一般的です。

静的プロファイルによる顧客分析の実際

それでは、静的プロファイルで実際にどのような顧客分析が行なわれるかを見てみましょう。分析軸となるデータとして、まずは最も一般的な「年代」「性別」を使用します。

下の図は年代別顧客数を時系列に配置した分析画面になります。シェアでグラフ化しているため、年代ごとの会員数の増減を簡単に読み取ることができます。

年代別顧客数の推移


傾向として、30代、40代のシェアが大きいこと、また最近では50代、60代が少しずつではありますが増えてきていることも分かります。つまり、既存顧客層として30代、40代のセグメント(グループ)と、新規顧客層として50代、60代のセグメントが存在することがこの分析から見えてきます。

次に男女別の顧客数を分析してみます。単純にすべての顧客を対象とするのではなく、シェアの高い30代、40代に絞って分析することで、傾向をより明確につかむことができます。

次の図を見てください。この図から、女性の割合が年々増えつつあることが分かります。これを顧客セグメンテーションの観点から考えると、既存顧客層と考えられた30代、40代の顧客が、既存顧客層としての男性と、新規顧客層としての女性の2つのセグメントに分かれつつあると解釈することができます。


30代、40代顧客での男女別顧客数の推移


ここまでの顧客分析の結果、3つの顧客セグメントを定義することができます。既存顧客層として定義された30代、40代の男性のセグメントがもともとこのサイトのメインターゲットであるとしたら、ここまでの分析結果では特別な課題は見えてきません。
しかし、残り2つのセグメントである、50代、60代の会員、および30代、40代の女性については、本来ターゲットとしてこなかったセグメントであったため、この2つのセグメントに関してはさらに詳細な分析を行ない、特徴を把握した上で何らかの対策を打つことができそうです。

また、年代、性別といった代表的な属性以外によく使用されるのが「趣味」です。取り扱う商品の幅にもよりますが、同じ趣味を持つ顧客が集まるような商品を扱うサイトの場合、この趣味を分析軸にすることで明らかな傾向が出ることが多いのも事実です。
同じことが「職業」にもあてはまります。このように、あらかじめ想定できる「趣味」や「職業」がある場合には、それ以外の属性値を持つ顧客が増加した場合、新たなセグメントが形成されたことになり、ビジネスを拡大するチャンスになります。

ただし、特に想定される属性値がない場合も、趣味や職業の分布に明らかな傾向が見られるときなどは、より詳細な分析を行ない、セグメントとしてのはっきりした性質がつかめれば、有効なキャンペーンや販売の効率化につながる可能性が生まれるでしょう。

動的プロファイルによる顧客分析の実際

次に、動的プロファイルを使った分析を実施してみます。最初に、分析軸となるデータとして「登録期間」を使用します。

登録期間の属性値は、顧客個人ごとに日々その値を更新する必要があります。例えば2月1日に新規登録した顧客は3月1日には登録期間が1カ月、4月1日には2カ月と延びていきます。また、分析の精度を上げるために、登録はされているが1年以上まったくアクセスや商品購入を行なっていない顧客を事実上の退会扱いと考えるなど、分析対象から削除するという方法もあります。

では実際に、登録期間別の顧客数を見てみましょう。次の図では、ほぼ8000±200の顧客数で推移しており、登録期間別の顧客数の傾向を読み取ることはできません。これは別の観点で見ると、サイトがオープンしてから堅調に顧客を確保し続けているということであり、顧客全体の数は一定の増加傾向を示していることになります。
しかし、顧客分析の目的はあくまでも顧客セグメンテーションにあるため、登録期間別では、セグメントは見つからないという分析結果になります。

登録期間別顧客数の推移


単一の分析軸から傾向がつかめない場合でも、別の分析軸と組み合わせることで新たな傾向を発見できる場合もあります。例えば、最近1カ月の訪問回数を5回単位でセグメンテーションし、登録期間と組み合わせて顧客数のシェアを見てみましょう。


登録期間別の訪問回数シェア


すると、登録期間が半年以内の顧客が圧倒的に多いという傾向が見えてきます。逆に言うと、顧客の多くは登録してから半年間は頻繁に訪問しますが、それ以上経つと訪問頻度が著しく落ちてくることを意味します。したがって、この顧客分析の結果、(1)現在は訪問回数が多いが、やがて頻度が低下する登録期間が半年以内の顧客と、(2)登録直後は頻繁に訪問していたが、すでに訪問頻度が低下している登録期間が半年以上の顧客という2つのセグメントが見つかったことになります。
よって、(1)の登録期間が半年以内の顧客セグメントに対しては、半年後以降も訪問回数を低下させない対策、(2)の登録期間が半年以上の顧客セグメントに対しては、すでに低下した訪問回数を再び増加させるための対策が必要なことが分かります。

一般的に、顧客分析を行なって顧客のセグメントを発見しても、それだけでは有効な対策を考えることは難しく、顧客のセグメントに対して、売上分析以降のより詳細で高度な分析を実施することが、ECデータ分析における標準的な流れになります。

しかし、顧客分析の結果から、ある程度有効な対策を実施できる場合もあります。例えばこの例では、登録期間が半年以内の顧客に対して定期品キャンペーンを実施するということが考えられるでしょう。定期品とは、1回の注文で同じ商品を一定間隔で配送するものです。サイトで扱う商品の性質にもよりますが、例えばリカーショップであれば、ビールのように毎日消費するであろう商品については、定期品としての購入需要が十分期待できます。
この対策は、サイト訪問回数の維持、増加という直接的なものではなく、訪問回数の多い顧客セグメントに対しての売上金額を最大化するという間接的なものですが、顧客の価値を最大化しようとする目的は同じです。

 

顧客価値最大化のための対策


このような対策を常に打ち出し、それが常に成功するとは限りません。しかし確実に言えることは、ECデータの効果を得るためには、データの分析結果をいかにしてビジネスへ応用することができるかに掛かっているということです。

今回は、顧客プロファイルを利用してセグメンテーションを行う顧客分析について解説しました。次回は、製品の購入履歴データをもとに、顧客の購買動向の分析と商品販売における課題の発見までを行なう売上分析について解説します。

 

本Webサイトではこの他にも様々なデータ活用のテクニックをご紹介しています。ぜひご覧ください!


 

 

分析レポート・帳票作成の効率化、部門や会社、グループを超えた大規模なレポート共有にお悩みはありませんか?

 

 

 

InsightNavi案件管理資料請求・お問い合せ

ECデータを活用するための分析テクニック

PAGE TOP