【コラム】 7.導入を成功させるためのポイント


 

これまでの章でご紹介したとおり、テレビ会議/Web会議システムの進化は、従来のコスト削減や効率化にとどまらず、利益を生み出すビジネスツールとして、また、顧客にリーチするためのマーケティングツールとしての側面を持ってきています。つまり、人と人とのコミュニケーションが発生するシーンでは基本的にどこでも活用が可能となりました。テレビ会議/Web会議システムは現実解のひとつとしての認識が企業に広がっています。

 

そういった広がりをもってきたテレビ会議/Web会議システム。それにあわせて成功事例も増えてきています。しかし一方で、当初目的としていたコスト削減や利用促進が思うように進まないという声も一部にあります。ここでは、成功事例から見えてきた導入を成功させるためのポイントについて考えていきます。

世の中の全ての道具(ツール)に言えることですが、ツールを導入するだけでは効果を出すのは難しいといえます。そのため成功させるためのポイントは以下の5点がまず挙げられるでしょう。

 

(1)導入の際の利用イメージの具体化、目的の明確化
(2)最適なシステムの選択
(3)組織体制(社内文化、トップのバックアップ)
(4)利用目的に対しての評価、効果測定
(5)導入促進プロジェクトの組成と継続的な利用促進活動

 

(1)導入の際の利用イメージの具体化、目的の明確化

導入を成功裏に収め、利活用が進んでいるユーザ企業では、生産性向上や効率化、経費削減といった経営課題(最終的には会社の利益につながる)にリンクした形で、まずは導入の際の利用イメージの具体化と目的の明確化がしっかりとなされています。
ここがぶれていると後述の効果測定の有効性が成立しなくなります。初めてシステムの導入の検討を始めるという場合、最初におこなうことは、最近はさまざまな事例が公開されていますので、それらを参考にして自社の具体的な使用方法と目的の明確化を検討されるとよいかと思います。

 

(2)最適なシステムの選択
第2点目ですが、使用目的が明確化したのちにシステムを選択するという段階になります。導入を検討している企業からよく聞かれるのはどのシステムが自社に最適なのかわからないという意見です。ネットの活用が一般的になり技術の進歩もあって、現在さまざまな製品やサービスが提供されており、どのシステムが自社にとって良いのか評価をするのは難しい面もあります。評価軸としては、様々あり、例えば性能や機能、費用、利用する人数、組織内外、利用頻度、ユーザインターフェイス(使いやすさ)、ベンダーのサポートなどがあります。そのほか他のユーザの口コミや第3者の調査会社のレポートなどを参考にし自社に最適なシステムを選択します。

 

(3)組織体制(社内文化制度、トップのバックアップ)
第3点目ですが、システム導入に対するトップの理解やバックアップは重要です。なぜなら社長が消極的だと導入プロジェクトや導入後の利用促進の成否に影響することが往々にしてあるからです。また、テレビ会議やWeb会議使用にあった社内制度(出張規定など)や文化(ツールを使う習慣)を作っていくという視点も必要です。ここが欠けているとどんなに良いシステムを導入したとしても、遠隔会議業界でよく言われる導入しただけど誰もつかわなくなり“埃をかぶる”結果になる可能性が高くなります。 つまりトップを含め社員をどう巻き込んでいくかが成功の鍵を握っていると言えるでしょう。ここがうまくいくと、トップの支援も得られやすくなりますし、社員も協力して利用していこうとう気運が高まります。
社内文化制度のある企業の例では、顧客との打ち合わせは実際にオフィスに訪問しますが(もちろんWeb会議でも可)、社内会議は原則全てWeb会議で行ったり、遠隔地の支店との打ち合わせに出張しなければならない場合は上長の許可が必要だったり、部署ごとのWeb会議の利用をモニターし、利用が伸びているところは賞与で報いるという企業もあります。いかに動機付けしていくかという点で工夫の凝らし方は企業それぞれのようです。

 

(4)利用目的に対しての評価、効果測定
第4点目ですが、先述の社内での使用目的を基に効果測定方法を明確化することが必要です。効果測定の方法については、会議やミーティング目的であれば、基本的には出張費や時間という観点からコスト削減額を算出するのが一般的です。またセミナーをオンラインで行うなどウェビナーの効果測定においては、会場レンタル費や運営費、来場者の会場までの移動費・時間などを考慮します。昨今、テレビ会議/Web会議システム導入コストは昔より下がってきているため、コスト削減の効果やROI(投資対効果)はかなり短期間で実現できるようになっています。数回の出張をテレビ会議/Web会議に置き換えただけで導入コストをペイしたという事例も多いです。それはウェビナー開催による効果でも見られます。

CSR(企業の社会的責任)の一環としての取り組みの観点からの活用もあります。その場合、Web会議することで出張を削減できるので、見なしでCO2をどのくらい削減できたかを数量的に算出して評価効果測定しています。
以上は一般的に見える化しやすい例ですが、企業によっては、独自に評価基準を設けてシステムを活用することでどのくらい仕事に生産性をもたらしたのかを定量的に評価しているようです。

 

Web会議

 

 

(5)導入促進プロジェクトの組成と継続的な利用促進活動
第5点目の導入促進プロジェクトの組成と継続的な利用促進活動は、社内にツールを定着させていくための施策となります。

 

導入促進プロジェクトは、トップの理解の下、プロジェクトリーダを任命し、システムの組織での浸透、定着を任務とすべきです。 プロジェクトは、トレーニング、利用状況のモニタリング、効果の測定、ユーザサポート(一次受付)、システムベンダーとの連携などからなり、プロジェクトリーダが責任をもってプロジェクトの進捗管理をおこないます。

 

もし社内でのシステムの利用が停滞している場合は、理由がなぜかをモニタリングし、明らかになった問題にして解決策を考え実行しシステムの定着につとめます。
さまざまな事例を長年見てきて思うのは、テレビ会議/Web会議システムを活用するというのはひとつの習慣でありまた文化でもあるということです。習慣を身に着けたり、文化にしていくためには、計画的な導入および利用促進をトップやプロジェクトリーダの強い先導で行っていくことが大事です。一見、回り道のようですが、しかし、その方が結果的に投資対効果への近道になります。