第2回 テレワーク環境における課題(1)
新型コロナ対策の長期化が予想される現在、テレワーク環境においても、BIツールを使ったデータ分析業務を支障なく遂行できるようにする必要があります。
この連載コラムでは、テレワーク環境でBIツールを使用する場合に発生するさまざまな課題とその解決策について全4回にわたって解説します。
BIツールをテレワーク環境で使用する際に発生する課題は、BIツールの構成によって異なります。
そのため、本連載の第1回「BIツールの種類とその構成」では、まず、定型レポーティングに使われるレポーティング・ツールと非定型分析に使われるセルフサービスBIツールそれぞれの構成を解説いたしました。
また、昨今の状況から、各種システムやサービスをテレワーク下で使用する場面が増加しています。
一方、セルフサービスBIツールに多く見られるデスクトップ型構成のBIツールについては、在宅・テレワーク環境だからこそ発生する課題についても顕在化してきています。
そこで、第2回「テレワーク環境における課題(1)」と第3回「テレワーク環境における課題(2)」では、ソースデータの収集、データの統合と加工、DB作成、分析操作からレポートの共有に至るデータ分析作業のステップに沿って、デスクトップ型構成のBIツールで発生する課題を解説します。
デスクトップ型構成のBIツールをテレワーク環境で使用する際に発生するさまざまな課題の解決には、フルクラウドBIツール(ETLツール、分析用DB及び分析ツールの全てが同一のクラウド内で構成されるBIツール)の利用が有効です。
第4回「フルクラウドBIツールによる課題の解決」では、フルクラウドBIツールの特徴とデスクトップ型構成のBIツールとの違いを、データ分析作業のステップに沿って解説します。
第2回の今回は、ソフトウェア導入とソースデータの収集ステップにおいて、デスクトップ型構成のBIツールで発生する課題を解説していきます。
テレワーク環境で使用されるPCには、3つのパターンが考えられます。
1と2のケースで、デスクトップ型構成のBIツールを使用する場合は、新規にソフトウェアを導入する必要がありますが、ここでライセンスの問題が発生します。
一般的に、デスクトップ型構成のBIツールは、ライセンスを購入してライセンス・キーを入手しないと、ソフトウェアをインストールしただけでは使用できないようになっています。
つまり、今まで使用していたPCとは別のPCで同じBIツールを使用する場合は、追加でライセンスを購入する必要があるということです。
ライセンスを購入することなく、この問題を回避する方法として考えられるのは、
のいずれかしかありません。
Ⅰの方法では、出社した際にBIツールが使えなくなってしまいますし、Ⅱの方法は、ノート型PCの場合はともかく、デスクトップ型PCの場合には、輸送の手間や自宅での設置場所の問題を考えると、現実的ではありません。
ソフトウェア導入後に行われるデータ分析作業の第一ステップは、ソースデータの収集です。ここでは、セキュリティとネットワークトラフィックの問題が発生します。
最初のセキュリティの問題とは、公衆インターネット回線を通じて、厳重にセキュリティ管理が行われている会社のデータベースにいかにしてアクセスするかという点です。
BIツールを使用するPCが社内のLANに接続されている場合は、このような問題は発生しません。
しかし、企業のデータベースには厳重なアクセス制限が設定されていて、ファイアウォールを超えたリモートでのアクセスは許可されていないのが一般的です。
したがって、たとえ会社で使用していたPCを自宅に持ち帰って使用する場合であっても、そのままの設定では、ソースデータの収集ができなくなります。
これを解決するためには、IT部門に依頼して特別なアクセス許可をとった上で、データベース側と、PC側の双方で設定を変更するという煩雑な手続きと作業が必要になります。
仮に、このような手続きと作業を経て、データベースへのリモート・アクセスが可能になったとしても、別のセキュリティ上の問題が発生します。
それは、データの社外への持ち出し規定に違反する可能性がある点です。
デスクトップ型構成のBIツールでは、収集したソースデータはPCのローカルディスク上に格納されることになります。
これは、例えばUSBメモリを使ってデータを社外に持ち出し、自宅のPCにコピーするのと同じことになります。
BIツールで分析するデータの大部分は、一般的に社外への持ち出しが禁止されているため、この点でも特別な持ち出し許可を得る必要があります。
2つ目のネットワークトラフィックの問題とは、今まで社内LANを通じて行われていた大量データの転送が、テレワーク環境では公衆インターネット回線を通じて行われるという点です。
デスクトップ型構成のBIツールは、ソースデータをいったんPCのローカルディスクにダウンロードする必要があります。
この際、社内LANでは問題にならなかった通信速度と通信量が、公衆インターネット回線を通じて行われることで、ダウンロードに長時間かかるようになる、あるいは、高額な通信料金が発生するという事態を招く可能性があります。
以上のように、デスクトップ型構成のBIツールをテレワーク環境で使用する際、会社で使用していたPCを自宅に持ち帰って使用する場合を除き、ソフトウェアの導入ステップにおいてライセンスの問題が発生することになります。
また、その次のソースデータの収集ステップにおいては、セキュリティとネットワークトラフィックの問題が発生します。
次回は、データ分析作業の残りのステップであるデータの統合と加工、DB作成と分析操作、レポートの共有において、デスクトップ型構成のBIツールをテレワーク環境で使用する際に発生する課題を解説します。