コラボレーションツールといえば、代表的なのは、テレビ会議システムとWeb会議システムです。テレビ会議システムは、それ専用として開発・設計・製造された専用端末の“装置”です。一方、Web会議システムはパソコンのOSで動作する“ソフトウェア”となります。映像・音声・データを交えたオンラインミーティングを実現するツールという意味では両者は同じ機能を提供していますが、製品としての提供方法に違いがあります。
基本的にはこの違いで、テレビ会議システムとWeb会議システムと呼び分けています。ただし、メーカによっては、この定義からするとWeb会議システムにもかかわらず、テレビ会議システムと呼んでいるところもあります。ユーザから見てその方がわかりやすいという意図があるのだと思います。
では、そもそもなぜWeb会議システムはWeb会議システムという名称なのかというその理由を辿ると90年代のインターネット黎明期にさかのぼる必要があります。紙面の関係で詳細は割愛しますが、そもそも電話会議向けの資料共有機能として登場し、当時(北米)は、”Presentation On the Web browser”などと呼ばれていたのがWeb会議システムの走りです。そこからWebを取ってWeb会議システムという呼称が誕生したのでしょう。そして、インターネットが普及するにつれ、資料共有に映像や音声が付き、今のテレビ会議とは似て非なるWeb会議システムになったといえます。
テレビ会議システムは、音声・映像・データ(資料)を交えて遠方の拠点とのミーティングが行えるシステムです。テレビ会議は相手の顔を見て会話することができる点が大きな特徴といえます。昨今、ハイビジョンやステレオ音声などに対応して昔のイメージ(紙芝居とまで言われたこともあります)とは程遠い快適な会議が行えるようになってきています。しかし高価であるというイメージはまだあります。
一方で、本稿の主要テーマであるAdobe ConnectなどWeb会議システムは、テレビ会議システムと同様に音声・映像・データを交えた遠隔地とのミーティングが行えます。
しかしながら、テレビ会議システムと相違する点がいくつかあります。それは、テレビ会議システムが専用端末を使用する一方で、Web会議システムは、汎用のPCで実現しているところがまず一つ目の違いです。汎用PCを使っていることから、テレビ会議システムに比べ、コスト的にも手間的にも導入しやすい事です。
もう一つの違いは、Web会議システムは、データ共有が得意という点でしょう。PCをベースにしたシステムですので、PCのファイルやアプリケーションなど共有はお手の物です。もちろん、この機能についてはテレビ会議も基本的には可能ですが、共有方法や操作性においてWeb会議はより簡単に行えるといえるでしょう。加えて、PCに外付けのマイクスピーカーやカメラなどをつないで、ひとつの拠点に5人とか10人とか参加して行うテレビ会議のような使い方も一般的になってきています。
項目 | Web会議システム | テレビ会議システム |
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コラボレーション |
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必要機材 |
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特徴 |
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使用場所 | どこでも | 主に会議室 |
利用者数 | パーソナル/グループ同士 | グループ |
導入コスト | 低コストで導可能 | 高価 |
以上が、テレビ会議とWeb会議の簡単な特徴と違いですが、最近のトレンドとして共通して言えることは、「クラウド」や「モバイル」に対応してきているということです。
クラウドにより、特にWeb会議についてはサービスとして利用する形態も可能になってきました。また、端末もスマートフォンやタブレットも対応(マルチデバイス)してきましたので、出張先などでスマートフォンやタブレットからテレビ会議やWeb会議とつないでミーティングを行うということもできるようになってきました。ネットワークがあればどこでも使える使い方が広がってきているといえます。加えて、Web会議上で遠隔講義することができる「eラーニング」や遠方の人も何百人と参加できるオンラインセミナー「ウェビナー(Webinar)」の実現も容易になってきています。
Web会議システムは、これまでは、動画や音声が遅延したり、導入コストが高すぎる、十分なネットワーク帯域をとれないなど「使えない」といったマイナスイメージがありましたが、今やそれらは払拭されたと言っても過言ではないでしょう。遠隔会議システムは、人と人とをつなぐコラボレーションツールとして、これからのさらなる進化が期待されています。