第4回 売上分析
この連載コラムでは、ECを運営する企業が、ECシステムに蓄積されたデータを活用するための分析テクニックを全7回にわたって解説します。
第4回の今回は、製品の購入履歴データをもとに、顧客の購買動向の分析と商品販売における課題の発見までを行なう売上分析について解説します。
売上分析は、eコマースサイトの活動状況を把握するための基本的な分析です。
日別、月別、年度別などの期間別に売上データを分析したり、eコマース特有の情報である顧客属性を組み合わせたりして、さまざまな角度から売上データをチェックします。これらの分析を行なうことで、現状を把握するだけでなく、商品構成の最適化、優良顧客の拡大など、さまざまな施策を展開することが可能になります。
図1は、売上分析のデータモデルの一例になります。このデータモデルを使用して、売上分析の例として、「顧客属性による分析」と「時系列分析」を行なってみましょう。
図1 売上分析のデータモデル
eコマースサイトで最も重要な数値である「売上」については、定期的に分析を実施し、どの商品がどのように売れているかを把握しておく必要があります。
リカーショップのサイトを例に、顧客属性を使った売上分析をしてみましょう。
リカーショップのサイトでは購入の際、会員登録が必須となっており、顧客の基本的な属性である性別、年齢、地域などを売上データと結び付けて分析することが可能です。
例としてここでは「年代別」「商品別」にどのような商品が売れているのか、売上ランキングを見てみましょう。
図2を見ると、20代と30代のランキングにあまり差はなく、20代、30代に共通して人気の商品は、ビールA、ビールB、焼酎Aなどになっています。40代と50代も同様に大きな違いを読み取ることはできません。40代、50代に人気の商品はビールA、発泡酒A、焼酎Aなどです。60代になると40代、50代とは少し傾向が異なり、40代、50代にはなかったワインがランキングに入っているのが分かります。
図2 年代別売上ランキング:「年代」×「商品」
これを見ると、人気商品の分析については、年齢を10代刻みで行なうよりも、20代刻みで行なった方が傾向をつかみやすいことが分かります。つまり、売れ筋商品の年代による傾向は「緩やかに現われる」と言えます。
このようなランキングを定期的にレポートすることで、各年代に人気の商品を把握し、その時々の重点商品を絞り込むことができます。
次に売上分析の2つ目として、よく売れている「商品価格帯」を分析してみましょう。
図3は「商品価格帯別」の売上を時間の経過に沿ってグラフにした時系列分析の画面です。
時系列にデータを追うことで現在の位置付けや傾向を把握することができます。
図3 時系列分析
図3を見ると、2020年1月から6月までの半年を通じて最も多く売れている価格帯は1円から1000円であることが分かります。これはおそらく、ビールや発泡酒などの単価の低い商品が多く買われている結果だと推測できます。
もう1つの傾向として、1000円~2000円、2000円~3000円の中間価格帯の割合がこの半年間で増えつつあることが分かります。どちらの価格帯も2020年1月から徐々にではありますが増加傾向が続いています。
では、次に「商品カテゴリ別」に売れ筋の商品価格帯を見てみましょう。
図4はビール、ワイン、焼酎、日本酒それぞれの売上価格帯ランキングになります。
やはり焼酎を除く各カテゴリで1円~1000円がランキング1位となっているのが分かります。一方、この半年間で徐々に増えつつある1000円~2000円の価格帯に属するカテゴリは日本酒、ビール、同様に増加傾向を示している2000円~3000円の価格帯には焼酎が影響していることが分かります。
図4 売上商品価格帯ランキング
ここで焼酎の売れ筋価格帯に注目してみましょう。3000円~4000円の価格帯が2位にランキングされていることから、ほかの商品とは異なり比較的高額な商品が、人気が高いことが分かります。これは昨今の焼酎人気を裏付ける結果となっていることもあり、リカーショップでは今後、2000円以上の焼酎について商品を充実させるべきだと考えました。焼酎以外の商品についても売れ筋価格帯の商品を充実させることで、売上の増加が期待できるのではないかという戦略を練ることができるでしょう。
今回は、製品の購入履歴データをもとに、顧客の購買動向の分析と商品販売における課題の発見までを行なう売上分析について解説しました。次回は、顧客が購買に至るまでの活動の記録をもとに、製品や顧客グループの傾向や特性を分析するクリック分析について解説します。
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