第1回 残業時間の分析
このコラムでは、人事データを活用するための分析テクニックをシリーズでご紹介しています。
第1回の今回は残業時間分析がテーマです。
働き方改革の目玉として、多くの企業で勤怠管理システムが導入され残業時間データが蓄積されるようになりましたが、このデータが十分に活用されているとはいえません。
毎月、社員ごとの残業時間を集計し、36協定(※1) 違反の発生に目を光らせるといったことは行われていても、
・部門ごとに集計し部門間の違いを見る
・平均だけではなくヒストグラム(※2)で社員間の負荷の偏りを見る
といった分析まで行っている企業が少ないのが現状。
今後はこのような、より高度な分析により残業時間データを最大限に活用することが望まれています。
今回ご紹介するテクニックは3つです。
(※1)36協定
「36協定」とは、企業が社員に対して、法定労働時間を超えて勤務を命じるために必要な労働協定のことで、労働基準法第36条に基づく協定のために、一般的に36協定(サブロクキョウテイ)と呼ばれている。
(※2)ヒストグラム
データの値を等間隔の区間に分け、それぞれの区間に含まれるデータの数を計算したものを「度数分布」と呼び、求められた度数分布の値を棒グラフであらわしたものを「ヒストグラム」と呼ぶ。
(※3)ファンチャート
「ファンチャート」とは、ある基準となる時点を100%とし、それ以降の数値を基準となる時点に対する百分率で表示し折れ線グラフで表したもので、グラフが扇(ファン)を広げたような形をしていることからファンチャートと呼ばれる。
部門別の「月平均残業時間」 を計算し、折れ線グラフで時系列に表示します。
部門間の比較を行い、残業が多く発生している部門を見つけることができます。
この例では、開発2部が開発1部に比べて大幅に残業時間が多くなっており、早急な対策が必要といえます。
部門別の「月合計残業時間」を計算し、ファンチャートで表示します。
ファンチャートにすることで、部門ごとの残業時間の増減傾向を明確にすることができます。
先程のグラフと合わせて考えると…
開発1部は開発2部と比べて「残業量」自体は少ないですが、ここ数ヶ月で増加傾向にあり、
開発2部は開発1部と比べて「残業量」自体は多いものの、前月と比較して減少していることがわかります。
この例では、4月の合計残業時間を基準に部門別のファンチャートを作成しています。
開発2部は6月に大幅に改善していますが、開発1部は、5月、6月と連続して増加しています。
ファンチャートにすることで、残業時間の大きさとは関係なく、各部の増減傾向が明確に読み取れます。
先ほどの「部門別平均残業時間時系列推移」と同じデータを使用していますが、先ほどとは異なる視点での分析結果が得られます。
部門ごとに「社員別合計残業時間」の度数分布を計算し、ヒストグラムで表示します。
部門ごとに残業時間のばらつきを可視化し、一部の社員に負荷が偏っている部門を見つけることができます。
この例では、区間の幅を20時間にしてヒストグラムを作成しています。
開発1部は、60時間未満の区間にデータが集中しており、特に負荷が集中している社員はいないようです。
一方、開発2部は、広い区間にデータが散らばっており、一部の社員に負荷が集中していることが見て取れます。
この結果から開発2部の平均残業時間を下げるためには、社員間の負荷の偏りを改善することが先決であることわかります。