【コラム】 3.企業にとっての意義―多様化する利用目的


 

前章で述べたように、従来のネットワークは狭帯域であったり、高解像度の映像を処理するには十分ではなかった端末技術が進化し、今日、高品質な映像・音声・データ共有を実現するに至りました。加えて、ブロードバンドやスマートフォン/タブレットの普及により、会議室だけでなく、ネットワークが使えるところでは、出張先・自宅など、いつでもどこでも誰とでもテレビ会議/Web会議システムが行える環境が整いました。

 

そういった状況を受けて、テレビ会議/Web会議システムは、大企業から中小・フリーランスまで組織の大小を問わず、コストや利用目的に応じて、さまざまな製品やサービスを選択できる時代になりました。また国や地方自治体レベルまで含めた社会的なムーブメントも広がっており、テレビ会議/Web会議システムの普及が加速する下地が整ってきています。

 

さまざまな装置やデバイスを使うことで、この“いつでも”“どこでも”“誰とでも” テレビ会議/Web会議が行えるということが、企業におけるテレビ会議/Web会議システムの利用目的を多様化させてきたと言えるでしょう。

 

テレビ会議システムが企業に導入される形で世の中に登場してきた80年代ごろから今日まで、出張費の削減/時間節約のほか、遠隔地と連携した業務における情報共有・効率化・生産性の向上、意思決定の迅速化といったところが、代表的な導入・利用目的として広く知られています。今日は以上に加え、ワークスタイル変革、研修/トレーニング等の効率化、災害等のBCP対策、顧客サービスの向上、CO2など環境保護などといった新たな導入・利用目的が出てきており、従来よりも、企業にとって活用できる可能性が広がっています。

 

ワークスタイル変革においては、企業の人材のダイバーシティ化が背景にあります。少子高齢化で子育てや介護をしながらでも働き続けたいという人も増え、そういった優秀な人たちのための環境(たとえばテレビ会議/Web会議を会社との連絡手段に使ったテレワーク)を提供することが目的になっています。

 

災害等のBCP対策においては、我が国が地震や津波など自然災害が多いという現実が背景にあります。災害が発生し会社に出勤できないといった事態になった場合、会社の上司や同僚との連絡や仕事を継続することは可能なのかといったリスクは事前に想定しておく必要があります。そういった際にインターネットを活用したテレビ会議/Web会議を活用することができるようになってきていますし、ひとつの有効な手段になってきています。

 

研修/トレーニング等の効率化においてもテレビ会議/Web会議の活用が有効との認識が広がってきています。従来は社員研修などでは、講師が支店や営業所を回り研修を実施していましたが、テレビ会議/Web会議を活用することで、一度に全支店や営業所を結び効果の高い研修を行うことが可能となっています。

 

顧客サービスの向上という観点から、テレビ会議/Web会議を使い新たなビジネスモデルを構築するケースが増えています。専門家が不在の支店へ本部からテレビ会議/Web会議を使った遠隔窓口を行うなど遠方の顧客や時間的な制限があり来店ができない顧客のニーズに対応することを狙いとしているものが多く見受けられます。

 

CO2などの環境保護を目的とした導入もあります。これはテレビ会議/Web会議を使うことでCO2の排出を抑える効果をもたらすものです。これにより、環境にやさしい企業イメージに寄与するといったCRS活動(企業としての社会的責任)の一環として行われています。

 

以上、ワークスタイル変革、研修/トレーニング等の効率化、災害等のBCP対策、顧客サービスの向上、CO2など環境保護は最近特に注目されています。出張費の削減や業務の効率化などに加え、これらの新たな利用目的で導入する動きが活発になってきています。テレビ会議/Web会議システムの選択肢が広がりコスト的にも導入しやすくなってきた昨今、利用目的の多様化は導入の敷居を下げる結果につながっているといえるでしょう。
次の章では、これらの利用目的の下、企業は具体的にどういった使い方をしているのかについてご紹介させていただきます。